【20】優しい嘘
『大好きなパパへ』 世界で一番大好きな私のパパ。 私のパパは世界一カッコイイ。 私のパパは世界一オシャレ。 私のパパは世界一頭がいい。 私のパパは世界一優しい。 パパは私のスーパーマンです。 パパは勉強も応援してくれています。 とにかく、私のパパは最高です。 でも・・・...
【19】母の席に座ってください
5年生の担任として就任した時、一人服装が不潔でだらしなく、どうしても好きになれない少年がいました。先生は、中間記録に、少年の悪いところばかりを記入するようになりました。 ある時、先生は1年生からの少年の記録を目にしました。...
【18】鏡の向こう側
自分の顔を鏡に映してみたら、そこにはかあさんと、とうさんの顔がありました。 わたしは、かあさんにそっと話しかけて見ました。 「かあさん、かあさん、ねえ、かあさん。かあさんは元気?今、どこにいるの?」 鏡に映るかあさんは何も答えてくれません。...
【17】鶴の願いごと
最後にできること 最後にしたいこと 最後だからできること あなたは人生の最後に何をしたいでしょう? わたしは今、とても悲しい。 八月の暑さと、啼きやまない蝉の声を聞くと思い出します。 わたしの名前は禎子。十二歳と少しの女の子で小学六年生になったばかりです。...
【16】悪口日記 ─あるヘルパーさんからの手紙より─
私はホームヘルパー一年生です。 本来はこの仕事、あまり好きではありませんでした。 なぜ始めたのかって・・・不謹慎かも知れませんが、「やることが何もなかった」からです。ホームヘルパーは訪問介護ともいい、介護を必要とするお年寄りや身体の不自由な方の家庭を訪問して、日常生活の援助...
【15】最後の五分間
彼は光が差し込む小さな窓から遠くを眺めていました。 外の世界はまるで時間が止まっているかのように、ゆっくりとゆったりと流れているように感じていたのです。 風はなく、空に浮かぶ雲は流れず、青空はそれでも碧く。 小さな窓からでも充分に感ずることができました。...