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【72】Yes short story

Yes short story

支え合ういのち

ある朝、がらがらの電車の中で女性が声を殺して泣いていました。何を思い、何を考えて涙しているのでしよう。決して、嬉しいことではないのでしよう。人前で泣くほどの辛いことがあったのでしようか。そこには深い悲しみの「いのち」がありました。私は声をかけようとしましたが、やめて、心の中で語りました。

いのち負けるな、いのちしっかり、いのち支えて、いのち生きろ、と。

チャップリン

街中で両手を合わせた老婆がいました。ずいぶんと長い時間でした。その老婆は何を思い、何を考えて祈り続けているのでしよう。祈り終わった老婆は、口をへの字に曲げながら、何かに一礼をすると、シャキッと背筋を伸ばし、持っていた杖を肩にかけて悠々と姿を消していきました。そこには、老婆の人生の深さを感じる「いのち」がありました。

まるで「ライムライト」のラストシーンのように。

お母さんのお見送り

ある葬儀会場で二人の幼い子どもたちがお父さんに寄り添っていました。

おそらくお母さんのお見送りだと思います。お父さんは必死に堪えていたようですが、火葬場内では声を出して泣いていました。

二人の幼い子どもたちは、お母さんとの最後のお別れだとわかっているのでしょうか?

二人ともとても優しい笑顔でした。火葬される妻の前では、お父さんが子どもたちを抱きしめているのかと思ったら、子どもたちが悲しみにくれたお父さんを抱きしめていました。

そして、優しいささやかな笑顔で、膝まずくお父さんの頭をそっと撫でていました。

四つの「いのち」は三つになりましたが、小さな二つの「いのち」が支えています。

あの時の自分

子どもが何人かの友だちにいじめられていたので、私はすぐさま注意をしました。おそらく小学三年生か四年生ぐらいの子どもたちです。「うるせいなぁ!」、そういいながら去っていきましたが、私は驚いていました。小学生に「うるせいなぁ!」なんていわれたのは初めての事だったからです。

私がいじめられた子どもの汚れたズボンをはたいてあげたら、その子は「ありがとう・・」といいました。そして別れ際、「ボク、負けないよ!大丈夫だよ!ありがと、おじさん」といってその場を去っていきました。

後ろ姿が見えなくなるまで、明るい笑顔で手をふり続けてくれました。私はその後ろ姿を見続けながら涙が止まりませんでした。

私は自分の子どもの頃を想い出しました。

あの時、誰も私を助けてくれる人がいなかったことを・・。

いま、私はあの時の自分を助けたのでしょうか・・。

生きる「いのち」。生き続ける「いのち」。

「いのち」ありがとう。

新しい「いのち」

新しい生命が誕生しました。

その小さな顔は若い夫婦に似ていますが、その夫婦のお父さんやお母さんにも似ています。おじいちゃんやおばあちゃんにも似ています。

新しい命が微笑みます。

その微笑みは、まわりのすべての人たちを明るい光で包みます。その光は誰にでも見えるものです。

新しい「いのち」が大きな声を出して泣きだしました。

まわりにいる若いお父さんもお母さんも、おばちゃんも、おじいちゃんも、曾おじいちゃん、曾おばあちゃんも、一緒に泣きだしました。それは、人生で一番素晴らしい喜びの涙です。涙は嬉しくても止めどもなく流れるものです。

また、ひとつ支え合う「いのち」が生まれました。

人生ってあなたが思うほど悪いものじゃあない、の歌が聞こえます。

もう一度逢いたい

たったひとつの「いのち」がなくなるだけで、こんなにも悲しいのだから、ふたつ、みっつと「いのち」がなくなれば、それだけ悲しみも多くなります。

もう一度逢いたい・・。

もう一度だけ逢いたい・・。

ひとめだけでも良いから逢いたい・・。

それが叶わないなら、夢でもいいから逢わせてほしい・・。

そう、誰もが同じことを思い続けます。

たったひとつの「いのち」が誕生するだけで、こんなにも嬉しくなるのだから、ふたつ、みっつの「いのち」が誕生すれば、それだけ喜びが多くなります。

もう一度逢いたい・・。

もう一度だけ逢いたい・・。

ひとめだけでも良いから逢いたい・・。

それが叶わないなら、夢でもいいから逢わせてほしい・・。

そう、誰もが同じことを思い続けます。

旅人

死ぬって何でしょう?あの世に行くとか、別の世界に行くとかいうけど・・・・。

その世界に行くと、みな忘れてしまうのでしょうか?

すごい人

私はすごいと思う、自分で自分を認めることのできる人を。

頑張るのは、自分の価値を認められない人。

頑張らないのは、自分の価値を認められる人。

ダメな理由は、すごい自分を恥じてしまうから。

だから、自分は出来ないのではなく、出来ることにする(自分が決める)。

頑張ると報われない。頑張らないとダメだと思う自分の考えで頑張ろうとしてしまうから。

頑張っても報われないのは、報われないことをしているから。あなたが頑張るから、まわりは頑張れなくなる、頑張らなくなる。そして、相手をダメにしていくのですね。

「人に迷惑をかけたくない」と考えてしまう場合がありますが、相手に迷惑をかけることも必要。頼むことも必要。すると、相手はいい気分になります。

人にやってもらう。やらせる。やらせてあげる、助けさせる。

ダメな上司だから、部下が活躍できる。人に任せた方が良い結果を生む場合がありますね。

断る、さぼる、怠ける、人に迷惑をかける、頼む、助けさせてあげる、適当にする、人任せにする、他人の力を利用する。

仏教では他力はとても尊い言葉。他力とは、見えない、大きな導きを受けて、魂が救済されることをいうのです。

頑張らないから、報われて。

頑張るから、報われない。

変化できる人

「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない、唯一生き残るのは変化できる者である」   ─生物学者ダーウィン

最初のお母さん

「お母さんは私のお母様です。お母さんのお母様はお祖母さんでしょう。そのまたお母様は曾お祖母さんでしょう。いったい、いちばん初めのお母様はだれでしょう?」

八歳になったばかりのある農家の女の子の母への質問。残念ながらその母は答えることができませんでした。

よい心

「よい心」人がよい行いをすることによって、心はよい心になる。よい心にになった人は、もっとよい行いをします。こうして一生涯、よい心とよい行い、よい行いとさらによい心というように、相互においてかかわる人格が向上します。

お別れ

お別れの言葉をなぜ言わないの?だって、別れなんてない、いつまでもこれからも一緒だからね。だから別れの言葉はいわないよ。

鏡の中

鏡を見て母を想い出す。

鏡を見ると父を想い出す。

人は必ず父や母の面影を自分の中に見つけ出す。

父や母の面影を子どもに残す。

だから、鏡を見たら想い出せばいい。

寂しくなることはありません。

壊れたおにぎり

あの日、あの子と待ち合わせした。

一緒にお昼を食べる約束で、夕方まで待ち続けたが来なかった。

数日したらお葬式となり、僕は一人で出向いた。

交通事故で無残な姿のため、顔を見ることはできなかった。

お線香を上げて手を合わせた。

その時、僕は見てはいけないものを見てしまった。

お線香の隣に、壊れたおにぎりが三つ並んでいたんだ。

参列者から「誰と食べるおにぎりだったのだろうね」、という声が聞こえた。

ものすごい哀しみに包まれ、僕はその場を走り去った。

僕のせいで、あの子は死んだんだ…。

慰め

小学四年生の頃、いちょう並木の下で友達が死んだ。

僕たちは中学二年生になるまで、毎年お線香を上げに出向いた。

三年生になる前にお母さんから「もう、来ないでほしい」と言われた。

その時の僕たちには意味が分からなかった。

僕たちは少しでもお母さんの慰めになればと考えていたのに。

「…ごめんなさい。あなたたちに会うと息子のことが忘れられないの…。生きていればあなたたちのように中学生になっていたのに…」

僕たちはその帰り道に四人で泣いた。

僕たちは、友達のお母さんを深く傷つけていたんだ…。

約束

父や母の顔を見て、あとどのくらい生きてくれるのでしょう、と考えます。まだまだ長く生き続けてほしいと願います。この世に父や母がいないなんて想像できません。もっともっと私を見守り続けてほしいと思います。

娘や孫の顔を見ていると、いつまで一緒に過ごせるのかと考えます。まだまだ元気に生き続けようと思います。この世に私たちがいなくなるなんて想像することできません。

いつもそばにいると、約束したい…。

優しい手

見知らぬ老人が突然、話しかけてきました。

「死なないで良かったね…」と。

次の日も、その次の日も、同じ場所で私に語りかけてきました。

誰が見ても認知症のおじいさんでした。

「良かったなあ、本当に良かったなあ…」とくり返します。

私には何が良かったのかがわかりません。

7日目となって、おじいさんが来ないと心配になりました。

いつもより遅くなって、おじいさんは来ました。

私はほっとして笑顔で接しました。

今日がこの場所に来られる最後の日だからです。

おじいさんは私の手を握り、抱きしめました。

おじいさんの優しい手の感触が、私に何かを思い出させます。

「本当に生きていてよかった…、お前は死んでしまうかと思っていた…」

思わず熱い涙がこぼれてきました。

私は思い出したのです。

その言葉は、父が亡くなる前に私に言った言葉だったのです。

もしかすると父は、この人の姿と言葉を借りて、逢いに来てくれたのでしょうか…。

罪滅ぼしと恩返し

妻が死にました…。

この世から妻がいなくなるなど、私には信じられませんでした…。

妻が残したたった一人の娘のことだけを考えて生きてきました。

それが私の妻に対する罪滅ぼしだと信じていたからです。

しかし、私の全身に妻の想い出がつまっていて、どうしても忘れることができません…。

娘には可哀想な思いをさせています。

いつも、申し訳ないと考え続けて来ました。すべて私に原因があると信じていたのです。

35歳になって、やっと娘が結婚することになりました。

式場では、私の隣の席に妻の遺影が置かれていました。

明日から私は一人になります。

新郎側の挨拶が終わり、娘がマイクを取りました。

「ねぇ、お父さん。お父さんは一人じゃあないよ!私の夫と、お腹には赤ちゃんがいるの…。四人の家族になるのよ、もっと喜んで…」

私は驚きました…。

「私の父への恩返しは、元気な子どもをたくさん産んで、お父さんに面倒と苦労をかけることだと思っています。私は35歳まで父の面倒をみてきました。だから、私はお父さんにありがとうはいいません…。今ここで、お父さんから私と夫、赤ちゃんとお母さんに「ありがとう」を言ってください…」

私は泣きながら、何度も何度もありがとうと言わせてもらいました…。

©Social YES Research Institute / CouCou

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