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【51】不機嫌なわたし

私は、会う人、会う人に、

「元気がないね…」とか、

「調子が悪いのですか…」

「疲れているようですね…」といわれます。

自分ではいつも元気で調子も良いし、疲れてもいません。

ですから、いつも不思議に思っていました。

ある日、スーパーに出向いたとき、可愛らしい女の子がいたので「こんにちは、いくつですか…」と訊ねたら、とつぜん泣き出されて驚きました。

ほかの人から見れば、まるで私がその子をいじめているようで随分と恥ずかしい思いをしたものです。そんなことが何度も続くので、また泣かれたら困ると、今は子供たちには話しかけないようにしています。

私は、大学でパソコン技術を教える授業をしています。

技術的な分野で堅い話が多いため、生徒たちの評価は低いような気がしています。

ある日、卒業式を迎えた生徒から記念写真を撮らせてほしいと頼まれました。毎年頼まれているし、特に断る理由もないので写真を撮ることにしました。

「ハーイ、チーズ」

シャッターは何度も切られます。

だんだん私は疲れてきました。

人気のある先生の所は人だかりで、まるでお祭り気分、はなやかです。

私の方は義理なのでしょうか、静かでした…。

すると、ある女子生徒から、

「先生、先生、お願いがあります…」

「何のお願い?」

「先生、写真を一緒に撮らせてください。そしてもうひとつお願いがあります。思いっきり笑ってほしいのです…」

たわいのない事でした、いつも通り笑えば良いのですから…。

何枚も、何枚も撮り続けました…。

「先生、どうして思いっきり笑ってくれないのですか?」

「え…笑っているよ!」

私は一瞬戸惑いました。

「先生、では見てください…」

デジカメを差し出され、私は画像を覗きました。

たしかに映っていましたが…不思議です、私は笑っていないのです…。

「ごめんなさい、ではもう一度撮り直してください」

すると、ますます笑えなくなりました。

たしかに笑っているはずなのに、カメラに映し出される私は怒っているような、睨んでいるような顔になっていました。

「先生、私は先生が笑った顔を見たことがありません。先生は笑顔が似合うはずです。最後の卒業式の記念写真ですから、優しい笑顔でいてほしい・・」

私は、困りました…。

私は慌てて、笑う練習をしました…。

しかし、笑えない。どうしても笑えないのです…。

顔が引きつり、まるで顔面神経痛のようです。

そして、数十枚の格闘の末、やっと笑顔らしき写真が撮れました…。

そう、私自身は笑っているつもりでいましたが、笑ってはいなかったのです…。

笑い方も忘れてしまうくらい、笑っていなかったのですね…。

信じられない話です。

私はその女生徒に笑顔でお礼を言ったのですが、女生徒は泣いていました…。

なぜか、私も涙がとまりませんでした。

実は、その女生徒が私の奥さんです。

子どもが生まれ、その子供の成長とともに、私は本当の笑顔になれるようになったのです。もう、どんな子供たちでも、私のことを怖がったり、驚いたり、泣いたりしません。

いつしか、私は自分の姿がわかるようになっていたのですね。

©Social YES Research Institute / CouCou

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