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【02】幸せを知らなかったネコ

人のためになること

人に心を尽くすこと

その人の幸せを願うこと

自分のことよりも相手を思いやること

愛するご主人様に喜んでもらうこと

愛する人に楽しんでもらうこと

自分のイヤなことは我慢すること

何よりもご主人様を大切にすること

ワタシは、そんなことを考えて生きてきました。

でも、ワタシには満足感や充実感がありません。

何よりも、心が悲しいのです。

ワタシは一人では生きていけません。

愛するご主人様がいなければ、生きられないのです。

何不自由ない暮らしは、誰が見てもシアワセそうに見えるでしょう。

でも、ワタシの心はいつも寂しいのです。

ある日、ワタシはご主人様に内緒で散歩に出かけました。

何と自由なのでしょうか?

ずっと家の中で暮らしてきたのですから、外が、空が、こんなに広いなんて知りませんでした。

長い冬が去って、ワタシの白い毛並みをなでる風がとても暖かく、思わずウトウトしてしまう。ワタシは、ワタシのようにふかふかな桜の花を見上げながら、ふと人生をふり返りました。

ワタシはシアワセなのでしょうか…。

わかりません…。

いつも人のために尽くしてきました。

そのことを理解してくれる人は、たぶんいないでしょう。

ほんとうに、がんばって、がんばって、生きてきました。

人に喜んでもらいたい、みんなに幸せになってほしい…と。

でも、ワタシのこの寂しさは何なのでしょう…。

ワタシは何か間違っていたのでしょうか…。

そんなときでした。大きなカラスがワタシに声をかけてきたのは。

「やあ、ちいさなネコちゃん。なんで浮かない顔をしているんだ?見渡してごらんよ、晴々とはこんな空のことを言うのだよ。なんとも気持ちいいじゃないか!」

「カラスさん、カラスさんはシアワセですか?」

「突然に、なんだい…?」

「…あなたは自由に空を飛べてシアワセそうだから…」

「はーっ、自由なんてものはなあ、不自由なものだ。空はあまりにも広すぎて、どこがいい場所なのかもわからないからなぁ…」

「ねぇ、ワタシひとつだけ教えてほしいことがあるの。それは、ワタシはシアワセなのか、フコウなのかってこと…」

大きなカラスは、目の前のちいさなネコが突然そんな質問をしてきたことに驚いて、言葉につまってしまいました。

「…。言いたくはないけど、はっきり言おう!キミはフコウだと思う…」

「どうして?どうしてワタシがフコウなの?ワタシには立派なご主人様がいて、いつもやさしく面倒をみてくれるし、寝る場所も食べることも心配ないのよ。とても恵まれていると思っているのに…」

「もし恵まれているのなら、どうしてキミはワタシにそんな質問をするんだ…?」

「…、ワタシ、どうしたらいいの…?」

「では、言おう…。それはね、キミは自分を大切にしていないんだよ」

「…そんなこと…。だってワタシはいつも自分を大切にしてきたわ」

「そんなことウソさ…。自分についたウソに気づかないだけさ…」

カラスはあっさりと、そう言いました。

「では、どうしてキミは悲しいの?どうして寂しいの?」

「自分がワガママだから…」

「何がワガママなの?」

「何がって、ワタシはいつも甘えているから…」

「何を甘えているの?」

「自分勝手だから…」

「どこが自分勝手なの?」

「……」

ちいさなネコは何も答えられなくなりました。

カラスは話し続けました。

「じゃあキミは、何のために人に尽くしているの?」

「…うーん、自分のためかなぁ…」

「それが自分のためになっているの?」

「……」

ちいさなネコは、ますます答えることができなくなりました。

「いいかい、ちいさなネコちゃん。キミに自分を大切にするということを教えてあげよう。今のキミは誰のことも大切にしていないんだ。自分を大切にできていないのだから、誰かを大切にできるわけがないんだ。自分を大切にするということは、誰かのために何かをしてあげることじゃあないんだよ。自分のために、自分に尽くしてあげることが、自分を大切にするということなんだよ」

「いつも人のためになること

人に心を尽くすこと

その人の幸せを願うこと

自分のことよりも相手を思いやること

愛するご主人様に喜んでもらうこと

愛する人に楽しんでもらうこと

自分がイヤだと思うことは我慢すること

何よりも人を大切にすること」

とキミは思ってきたね。

でも、その考えを逆にしてみたらどう?

「いつも自分のためになること

自分に心を尽くすこと

自分の幸せを願うこと

相手のことよりも最初に自分を思いやること

愛するご自分に喜んでもらうこと

愛する自分に楽しんでもらうこと

自分がイヤだと思うことは我慢しないこと

何よりも自分を大切にすること」

こうやって、まず初めに自分を大切にすることが、人のシアワセを願う第一歩なのさ!

そしてキミは、

もっと自分勝手でいい、

ワガママでいい、

誰にも遠慮などいらない、

思いっきり甘えればいい、

なにも我慢しなくていい、

思いっきり愛されたらいい。

ちいさなネコは何かに気づいたようです。

もっと自然で、

もっと自由に、

遠慮などせず、

ワガママになって、

思いっきり甘えてみようと思いました。

そのときから、ちいさなネコはご主人様に甘え続けています。

大きなカラスが話してくれたように、ちいさなネコが甘えれば甘えるほど、ご主人様は喜んでくれました。そして今まで以上に大切にしてくれるようになりました。

ちいさなネコは言いました。

「こうしているとワタシ、何かいいことをしているような気分になって、とてもシアワセ」

年老いたワタシは今もご主人様と暮らしていますが、ワタシはもっとワガママになり、思いっきり心配をかけ、病気にまでなっています。でも愛するご主人様の「いのち」の希望となって、御主人様を支えているのです。ワタシがワガママに生きているからこそ、ご主人様は元気でいられるようです。

大きなカラスが別れ際に言った言葉を思い出します。

「いいかい?カラスは甘えることができない。誰からも好かれない。嫌われてばかりの生きものだ。でも悪さをするわたしたちを嫌い、怖れることで、人間は注意するようになるのだよ。それも人のためになっていることだ…。わかるかな、ちいさなネコちゃん。キミたちはワガママになって、もっともっと甘えて生きていいのだよ。それがほんとうの生き方なのさ…」

ほら、キミの「いのち」はそのままでシアワセなんだ。

©Social YES research institute coucou

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