【81】センティナリアン
センティナリアン(百寿者)パワー
百歳以上の人をセンティナリアン=Centenarian<百寿者>といい、我が国のセンティナリアンは約4万人を超え、毎年増加傾向だといわれています。このように、日本では平均寿命を少し超えれば誰もが「ノナジェナリアン=Nonagenarian(90歳人、卒寿者)」や「センティナリアン」の仲間入りができるのです。
我が国にはすごい「センティナリアン」がいるのを知っていますか?
何十年も本屋で働き、毎日座りっぱなしだったという高齢者がいます。
彼は椅子の生活が長かったせいか腰痛に悩まされていたので、70歳を迎えた年から走り始めたといいます。
以来、毎朝10キロの早朝ジョキングを行うようになり、30回以上のマラソン大会や競技大会にも出場し、部屋の中はいつのまにかトロフィだらけになってしまったそうです。
その後、ホノルルマラソンでも完走を果たしましたが、80歳後半に脳梗塞で倒れ、走ることを断念します。
彼はこうして人生で一番大切な事を失ってしまいました。
医者通いの日々の中、さらに人生の目標を失ってしまいます。
「あと少し走りたかった・・」
「まだまだ走り続けたかった・・」。
彼の走りたいという欲求は日々強くなりますが、家族からも医者からもストップがかかっていました。
脳梗塞は脳に血液が詰まる病気で生命の危険があるものです。日々安静にして薬を服用し続けなければなりません。89歳の頃には最愛の妻が亡くなり、同時に走る意欲も、気力も失いました。90歳を前に、彼の心は焦り始めました。
部屋から一歩も出ない生活が続いていたので、身体中の筋力を失っていきました。
薬の副作用もあり、物忘れが激しくなり、足腰は自然と弱くなります。マラソンで鍛えた体力貯金はもうほとんどありません。医者からは初期の認知症と診断されて絶望的でした。
どんなに若くても、たとえスポーツマンであっても、入院生活では筋力が低下してしまいます。
(私の娘は、高校の修学旅行中に階段で足を滑らせて転び、全身の筋力を失ってしまいました。現在20代後半になっていますが、まだ完全に回復していません。)
彼は悩み続けます・・。
しかし、夢は捨てきれません・・。
まず、しっかり歩けるようにしようと思い、筋力を少しでも付けるためにリハビリ体操と軽度のトレーニングを始めました。
このままでは自分の足で歩けなくなるかもしれない、という恐怖心があったからです。
まさに90歳からの再出発。
それからどのくらい経ったでしょう。
いつのまにか彼は99歳になってしまいました。
「もう一度走りたい・・」
彼は切望し、筋力をつけるための努力を続けます。
歩行訓練から始まり、体操、散歩、ジョギングを続けたのち、本格的なトレーニングを開始しました。
毎朝、まず500m~1㎞ぐらいのジョギングをします。
トレーニングに集中することで無駄な不安を払拭し、体力、気力、筋力がバランスよくアップしていく自分を体感しながら、彼は再びやる気を取り戻していきました。
こうして彼は少しずつ元気を取り戻したのです。
高齢者の世界記録は、100歳のオーストラリア人が2003年10月に樹立、100m走で36秒19という記録が公表されていました。
「もっと良い記録をだしてみよう・・」彼はこれを目標にしました。
そして、平成16年(2004年)に行われた第19回北海道マスターズ競技選手権大会で200メートルと400メートルの百歳クラスで日本新記録、北海道新記録を達成します。
この2種目以外にも60メートル、100メートル、800メートルの記録は2007年時点で100歳クラスの記録(44秒68の記録)としてはまだ破られていません。
彼の名は「大宮良平(おおみやりょうへい)」。富良野市西麓郷に住んでいます。
この時点で彼は102歳(明治34年生まれ、現在は106歳)。
信じられないかもしれませんが、実話です。
脳梗塞を経た人がスポーツにチャレンジした話はよくありますが、高齢者で再チャレンジした人はほとんどいないのではないでしようか。
大宮さんの不屈の闘志は一体どこから生まれたのでしょう。
往年のマラソン経験者ではありません。
腰痛改善のために走り始めたマラソンでした。
そこから様々な大会に出場し、次々と新記録を更新したのです。
高齢になってもトレーニングを続け、走ることができるようになったのは、大宮さんの不屈の闘志と努力以外の何物でもないでしよう。
彼はマスコミにこんな言葉を残していました。
「歩くこと、走ることは、自分を支え励ましてくれた家族や友人、知人への恩返し」
「悲しみや苦しさを忘れさせてくれる良薬だ」
「何も考えずに歩いてみなさい、走ってみなさい。そうすりゃあ、いつの間にか明るく元気になっていますから」
100歳になっても筋力の回復ができることを証明した大宮さんは、生涯現役を目指しています。
©Social YES Research Institute / CouCou