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【13】答えはいつも自分の内にある、それは本の中にはなかった

随分と古いのですが、『剃刀の刃』という映画を知っているでしょうか?

ビル・マーレイ扮するラリーという精神の求道者が悟りに向う旅を描いた物語でした。

ラリーは読書好き、読書家といわれるくらい本が好きでした。

 彼は第一次世界大戦に徴兵され、大好きな読書から引き離されていました。その苦しかった戦争体験の直後に、彼はどうしても知りたいことがありました。

 それを求めてインドへの巡礼に出かけることになります。

 ラリーはヒマラヤ山系の頂上付近の寺院にたどりつき、賢者の導師と出会い、「私は生の秘密を知りたいのです」と導師にたずねました。

 すると、「山の頂上にある小屋が見えるかね?」と導師はいいました。ラリーは目の前の雪に覆われた頂上をじっと見つめ、山頂近くに建つ小屋を見つけました。

導師は、「あそこへ本を持って行き、自分の答えが見つかるまでいなさい」とだけいいました。

ラリーはそこに求めている答えがあるのではないかと期待し興奮するのです。そして何巻もの本をまとめ、小屋へと歩いていきました。

あまりの寒さのため、小屋の中で焚き火をします。そして、彼は一生懸命に本を開き読み続けました。まさにラリーにとって望んでいた瞬間です。

 ラリーはすべてを忘れ何日も読みふけりました。

それから何週間たったでしょうか。彼は寒さに凍えながら本を読み、答えを探し続けました。映画ではその経過の場面が進みますが、ラリーは次第に苛立つようになります。さらに欲求不満になっていくのです。

両頬に無精髭が伸び、必死の努力にもかかわらず、まったく答えが見つかりません。悟りに近づけません。ラリーはどんどんとあせりを覚え始めました。導師に疑いを持つほど、落胆していく様子が続きます。

 寒い。ラリーは凍えていました。雪はさらに降り、骨の髄まで冷え込み、風はうなり続けます。強烈な寒波は小さな氷柱となり、ラリーの口髭に垂れ下がってしまうほどでした。早く何とかしなければ。早く答えを見つけなくては、悟りの探究は次の生へと持ち越されてしまう。

 ラリーはあせります。炎はどんどん小さくなり、くべる薪はない。もう燃やすものがなくなりました。

 その時、突然真の理解が閃光のようにひらめき、彼の目が輝きはじめました。

 ラリーは本を二、三頁破ると、焚き火の中に投げ込みます。本は燃え、炎が立ちのぼると、ラリーはその暖かさに歓びました。まるで子共がいたずらをしているかのような微笑みが彼の顔に広がりはじめたのです。すると彼は力強く立ち上がり、さらに頁を破いては燃えさかる火の中に無心でくべることをくり返えします。

 微笑みは、くすくす笑いに変わり、しまいには吼えるような笑いに変わっていきました。

 彼は勝ち誇ったように、その本を丸ごと勢いよく炎の中に投げ入れます。残りの本も集めて、暖をとる燃料にしてしまいました。

輝かしいオレンジ色の光りに抱かれ、暗くなりかけた山頂に立つラリーの影がうつります。翌朝になると、ラリーは行進して下山し、ベースキャンプに行きました。彼は幸福の絶頂でした。

 ラリーは自分の答えを見つけたのでした。それは、本の中にはなかったのです。彼の答えは生きることでした。生き続け、生き抜くことが彼の求めていた答えだったのです。

 生をその瞬間に満たし、歓びにふれるものにするために、必要なことはなんでもするということだったのです。

 悟りは、言葉や寒さや苦しみから逃げる中から見つけることはできませんでした。

答えはどこか外にあるわけではなかったのです。

 答えは彼がいる、まさにその場所にあり、彼はそれをいつも持っていたのです・・・。

─このような映画でした。

 導師からの最も素晴らしい贈物は、本を読む必要はなかったという気づきであり、探し求めている宝石が、すでに自分の心の中に埋め込まれていることを思い出させることでした。人間には、学ぶことよりも確かな生命の根源があり、悟りへの道は、回復への道だということを自らに由って見つけ出すことだったのです。

 人が自らの豊かさを求めたがらない場合は、外界からの価値判断に救いを求めてしまいます。外の源に強さを求めることで自分を否認し、本来の自力を失ってしまう恐れがあります。

ラリーは本の中からではなく、本を燃やすことで生きる答えを見つけました。

本を燃やさなければ寒さの中で生きられなかったからです。

では次に、自らの豊かさを信じた人たちを紹介します。

彫刻家ロダンの父は、「私は愚かな息子を持っている」「教育不可能」だと、息子ロダンのことを称しました。ロダンは、美術学校入学に三回も落ちました。しかし、ロダンは自分の内を信じていました。

ビートルズはキャピタトルレコードと契約するまで、十社のレコード会社から断られました、しかし、それでも彼らはただ扉を叩き続けました。

リチャード・フッカーのユーモア戦争小説『M*A*S*H』は、モロウ社が出版を決めるまで、二十一年もの間、出版社が断わりました。しかし、この作品はベストセラーとなり、大ヒット映画となりました。

ベートーベンはバイオリンの扱いが下手で、しかも自分の作曲したものを練習に使うのを好んでいましたが、彼の先生は作曲家としての望みはないといいました。

アブラハム・リンカーンは、大統領に選ばれる前に九回も選挙に落選し、二回破産宣言をし、神経衰弱に耐え、婚約者を失っています。彼はそれでも、「やめてしまわない限り、失敗はない」ことを信じました

アルバート・アイシュタインは、四歳になるまで言葉を話さず、七歳になるまで文字が読めませんでした。先生は彼のことを「知的障害があり、非社交的で、愚かな夢の中でいつまでもさまよっている」といい、チューリッヒのスクールでは入学を拒否され、追い払われました。

ウォルト・デイズニーは、アイデア不足だということで編集をクビになりました、それからディズニーランドを建設する前に何度も破産しています。

この人たちは、ラリーと同じく、自分の中に答えを見つけ出した人たちです。

©Social YES Research Institute / CouCou

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