【19】母の席に座ってください

January 11, 2018

5年生の担任として就任した時、一人服装が不潔でだらしなく、どうしても好きになれない少年がいました。先生は、中間記録に、少年の悪いところばかりを記入するようになりました。

 

ある時、先生は1年生からの少年の記録を目にしました。

それには、「朗らかで、友達好きで、誰にでも親切で、勉強も良くでき、将来が楽しみ」と書いてありました。これは何かの聞違いだ。他の生徒の記録に違いないと、先生は思いました。

 

2年生になると、「母親が病気で、世話をしなければならず、時々遅刻する」

と書かれてありました。

3年生の前半には、「母親の病気が悪くなり、疲れていて、教室で居眠りをする」。

そして後半の記録には、「母親が死亡。希望を失い悲しんでいる」と記されてありました。

4年生になると、「父は生きる意欲を失い、アルコール依存症となり、子供に暴力をふるう」とありました。

 

先生の胸には、深い痛みが走るようになりました。

 

ダメと決め付けていた少年が、深い悲しみを生き抜いている。生身の人間として、自分の前に現れてきたのです。先生にとって、目を開かされた瞬間でした。

 

放課後、先生は少年に声をかけました。

「先生は夕方まで教室で仕事をするから、あなたも勉強していかない?分からないところは教えてあげるから」と。

 

少年は嬉しそうに輝く瞳と笑顔で、「はい!」と応えました。

それから毎日、少年は教室の自分の机で予習・復習を熱心に続けました。

 

授業で少年が初めて手を上げた時、先生の心に大きな喜びが沸き起こりました。少年は自信を持ち始めていたからです。

その年の、クリスマスイブの午後でした。

少年が小さな包みを先生に押し付けてきました。

後で開けてみると、香水の瓶でした。

亡くなったお母さんが、使っていたものなのでしょうか。

 

先生はその香水を身につけ、夕暮れに少年の家を訪ねました。

少年の家は雑然とした部屋で、独り本を読んでいた少年は、先生の来訪に気が付くと直ぐに飛んできて、先生に抱きつきました。

 

「ああ、お母さんの匂い!今日は素敵なクリスマスだ。」

 

6年生では、先生は少年の担任ではなくなりました。

 

卒業の時、少年から先生のもとに一枚のカードが届きました。

それには次のようなことが書かれていました。

「先生は僕のお母さんのようです。そして、今まで出会った一番素晴らしい先生でした。」

 

それから6年後、またカードが届きました。

「明日は高校の卒業式です。僕は五年生で先生に担当してもらって、とても幸せでした。お陰で奨学金をもらって、医学部に進学することができました」

そして10年を経て、またカードが届きました。

そこには、先生と出会えた事への感謝と、父親に叩かれた体験があるから、患者さんへの痛みが分かる医者になれたと記され、こう締めくくられていました。

 

「僕は5年生のときの先生を思い出します。あのままダメになってしまう僕を救って下さった先生を、神様のように感ました。大人になり、医者になった僕にとって最高の先生は、五年生の時に担任して下さった先生です。」

 

そしてまた1年後、届いたカードは結婚式の招待状でした。

そこには、「母の席に座って下さい」と一行添えられていました。

先生は当時22歳で、学校を卒業したばかり、学問の教え方についての意気込みはあったものの、人を育むという、「本来教師が身につけていなければならない」ものを少年によって再認識したといいます。

このお話はタカトシの涙が止まらナイト:泣ける実話ドラマ『先生と少年』~35万人が涙した感動実話~ 『心に響く小さな5つの物語(第5話縁を生かす)』(文・藤尾英昭・画・片岡鶴太郎致知出版)で紹介もされたものです。

 

ここまでの内容の要約は作者不詳のままネット上で拡散しているお話で、70年代にアメリカの雑誌に投稿された実話です。作者不詳、出典先不明となっていますが、実は出典元(出典元diply)は明確なものです。それを創訳したものが次の内容でした。

 

それは、ある小学校の教師の物語でした。その教師は、生徒に自分が教師であることの意味を教わったといいます。

ジーン・トンプソンは新学期が始まった日、自分が担当することになった5年生のクラスを見回し、生徒たちにこう語りかけました。

「私にとって、あなたたちは全員がかけがえのない存在です。全員を平等に扱います。」

ジーンは毎年新しく受け持つ生徒たちにそう伝えるようにしていましたが、実際にはそれが無理なことであることはわかっていました。特に今年は、問題児のテディ・ストッダードが彼女のクラスに座っていることでした。 

ジーンはテディのことを以前から学校内で見かけていました。テディはひとりでいることが多く、クラスメイトの誰にも心を開かず、いつも不潔な身なりをしていました。特に癇癪を起こすことがあり、それが原因で他の生徒たちからも敬遠されていました。教師としては常に監視を怠れないタイプの生徒だということは明らかでした。ジーンは前任の先生の記録だけを見てテディを判断してしまっていたのです。後になって、自分だけの思い込みに後悔の念を持つようになりました。

新学期が始まってから最初の数ヶ月、テディは成績も振るわず、ジーンは心苦しいながらも彼に良い点数や評価を与えることができませんでした。

やがて、このままではいけないと感じたジーンは、テディの事情を知るために彼の一年生からの成績や評価に目を通し始めます。テディの資料に記されていた情報に、ジーンは自分の目を疑います。それは前任の教師からの悪い面の記録しか目を通していなかったことでした…。

テディが1年生だったときの担任は、彼についてこう記していました。「友だち思いで、好奇心に溢れた明るい生徒。宿題も期限に必ず提出することができ、成績もトップで、礼儀正しく、クラスの雰囲気を明るくするには欠かせない」。

2年生の記録は、「大変優秀で、他の生徒たちにも慕われている。しかし、お母さんの病気が少なからず彼に影響を与えている様子。家庭生活にも支障がでている様子」。

3年生の記録は、「テディは熱心に勉強を続けています。母親の死を経験し、何とか頑張ろうとしているが、心に大きなダメージを負っている。残念なことに、父親はテディにあまり関心がないらしく、責任感が希薄なため、何らかの措置を講じなければ、家庭環境が彼に悪影響を及ぼす可能性がある」。

4年生になると、「何も関心を示さなくなっている。友だちは沢山いるようだが、授業中の居眠り、始業時間に遅れてくることも度々ある。テディは今後、難しいケースになっていく可能性がある」。

テディの事情を知ったジーンは驚きましたが、彼女に一体何ができるというのでしょうか。

新学期は半分を終えようという時期で、クリスマスも近づいていました。クラスで開いたクリスマス会では、生徒の多くがジーンにプレゼントを持ってきました。色とりどりの可愛らしいラッピングペーパーに包まれたプレゼントの中に、一つだけ粗末な茶色い紙袋に入れられたプレゼントがあることにジーンは気づきます。

ジーンは生徒たちからもらったプレゼントをみんなの前で開けていき、やがて茶色い紙袋に手を伸ばしました。紙袋の中からプラスチック製の壊れたブレスレットと、半分使ってある香水の瓶を取り出したとき、生徒たちが一斉に笑い出しました。

確かにテディ以外の子どもたちのプレゼントは新しいものばかりでした。ましてや、壊れたブレスレットと使い古しの香水ですから、他の生徒たちから見ればいたずらに思えたのでしょう。

しかし、ジーンは騒ぐ生徒たちを制すると、「まあ…、きれいなブレスレットね…。」と一番嬉しそうに声を上げて身に着け、香水を少し手首に付けてこすりあわせました。

その日の放課後、テディがジーンのところへやってきました。そして恥ずかしそうにこう言ったのです。

「先生、今日はお母さんと同じ香りがする…」。

そのとき、ジーンはテディの後ろ姿を見送りながら涙をこぼしました。

テディから美しい贈り物を受け取ったこの日以来、ジーンは勉強や成績だけでなく、生徒たちをより注意深く見守るようになりました。クリスマス休みが明けると、ジーンは生まれ変わったような気持ちで新学期に臨みます。

ジーンは特にテディを一生懸命勇気づけ、授業についていけるように気を配りました。すると、それに応えるように、テディの方にも変化が現れ始めたのです。以前は悲しみや孤独感で雲隠れしていた笑顔や明るさが蘇り、ジーンが応援すればするほど、テディは元気とやる気を取り戻していくのでした。

その結果、テディはクラスでも一番を争うほど優秀な成績で小学校を卒業していきました。ジーンはすべての子どもたちに感謝しました。テディはもちろんのこと、たくさんの子どもたちから多くのものを与えられたことを。

そして、それから1年後、ジーンは教員室のデスクの上に一通の手紙を見つけます。

「先生は、僕が出会った一番素晴らしい先生でした。」

テディからの手紙でした。彼女はほっとしました…。元気でいてくれる知らせだったから。

6年が過ぎ、ジーンはまたテディの手紙を受け取ります。

「先生のおかげで、学年3位の成績で高校を卒業することができました。今でも僕にとってはトンプソン先生が一番の先生です。」彼女は涙しました…。

さらに4年後、ジーンは再び手紙を受け取ります。

「大変でしたが、大学を首席で卒業することができました。これも、小学生の頃になかなか勉強に手がつかなかったぼくにやる気を出させてくれたトンプソン先生のおかげです。」「先生は今でも僕の一番大好きな先生です。」と、手紙は結ばれていました。

さらに、その4年後、ジーンは再びテディの手紙を受け取ります。

「進学した大学院での学業は順調で、医学資格を授与されました。」

手紙の最後には「医学博士、ストッダード」とサインが記され、そしてやはり、ジーンが生涯で出会った最高の先生だとも書かれていました。いつのまにか14年が過ぎました。

その年の春、ジーンの元に結婚式の招待状が届きました。テディはステキな女性と出会い結婚を決めたこと、父親が数年前に亡くなったことを報告し、さらにジーンに結婚式で新郎の母親の席に座ってほしいと書いてきたのです。

「母の席に座って下さい…。」

ジーンはテディのお願いを快く承諾しました。

 

結婚式でテディの母親が座るはずだった席に座ったジーンは、あの時テディがプレゼントしてくれた母親の香水を身にまとい、腕には壊れたプラスチックのブレスレットをつけていました…。

テディはジーンに言いました。

「先生、ありがとう。僕が自分の道を見つけることができたのは、先生のお陰です。」

ジーンはそれにこう答えたそうです。

「テディ、違うわ。教師であることの意味を、あなたが私に教えてくれたの。」

出典元diply

 

 

©Social YES Research Institute / CouCou

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