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【20】優しい嘘

  • 執筆者の写真: ひかる 富樫
    ひかる 富樫
  • 2018年1月11日
  • 読了時間: 4分

『大好きなパパへ』

世界で一番大好きな私のパパ。

私のパパは世界一カッコイイ。

私のパパは世界一オシャレ。

私のパパは世界一頭がいい。

私のパパは世界一優しい。

パパは私のスーパーマンです。

パパは勉強も応援してくれています。

とにかく、私のパパは最高です。

でも・・・

パパは嘘をついています。

パパは嘘をついています。

会社に勤めていると。

パパは嘘をついています。

お金を持っていると。

パパは嘘をついています。

疲れてなんかいないと。

パパは嘘をついています。

お腹なんか空いていないと。

パパは嘘をついています。

私たちは満足な生活をしていると。

パパは嘘をついています。

自分は幸せであると。

パパは嘘をついています。

ぜんぶ私のために。

パパ、愛してる。

"My dad's story": Dream for My Child | MetLife "私のパパのお話": 〈私の子供の夢 〉メットライフ生命保険より引用

このお話は実話ではありません。

素晴らしい内容なので、ご紹介をすることにしました。

香港のメットライフ生命保険が、ネット上に企業のCMとして動画投稿したコマーシャルです。あくまでも企業サイドのイメージなのですが、あまりにも感動的なため、私は涙が出てしまいました。(わずか3分25秒のCMです。ユーチューブで見ることができます)

この話は、娘がお父さんに送った手紙です。

「…とにかく、私のパパは最高です」までの映像は、お父さんと娘がとてもしあわせそうにしている場面が続きます。少しばかり寂しげなお父さんと、その姿を静かに見つめている娘の姿が印象的です。

このCMには一切の説明がなく、娘からの手紙のテロップが流れているだけで、昔あった字幕映画のようです。

ただ、そこにはお母さんが登場しません。離婚してしまったのか、この世から去ってしまったのかは語られていません。あくまでも父と娘だけの世界が映し出されています。

勉強を教えてくれるお父さん、アイスキャンディを食べさせてくれるお父さん、レストランでお父さんと食事をする、学校の授業参観に駆けつけてくれるお父さん、いつもうれしそうな顔をしているお父さん…。

そんな大好きなお父さんに娘は手紙を渡しました。

お父さんは嬉しそうな顔をして、その手紙を開きます。

「…とにかく、私のパパは最高です」と書かれているところまでは、お父さんは笑顔でいっぱいでした。

しかし、「でも…」からは、娘は〈パパは嘘つき〉と書きます。

映像には、一生懸命に働く父親の姿が映し出されます。

仕事先でしょうか、お詫びをしています。面接に出向きますが、なかなか仕事が貰えません。毎日アルバイトをしているのでしょうか。日雇い人夫、便所掃除、ビルの窓拭き、食堂の皿洗い、職業安定所に通い、日々疲れ切っているようです。

映像をよく見ると、アイスクリームは娘の分だけ、レストランの食事も娘の分だけです。娘がお父さんに食べ物を差し出すと、お腹がいっぱいだと、首を横にふっています。

お父さんの嘘は、すべてばれていたのです…。

「パパは嘘をついています…」からのお父さんの表情はみるみるうちに、変わり始めます。

愛する娘のため、愛してくれる娘のため、お父さんは苦しくても嘘をつき続けていました。しかし、娘にはお見通しでした…。

娘はきっと苦しかったのでしょう…。

ですから、お父さんの優しい嘘に長い間つきあっていたのかもしれません。

何故って、それは、お父さんが大好きだからです。

その優しい嘘は、自分のためだと知っていたからです。

それはそうです。お父さんは、可愛い娘に心配をさせるわけにはいかないのです。

でも、娘は苦しく哀しかったのでしょう。

その想いが、お父さんにあてた一通の手紙でした。

世の中のほとんどの親は、主人公のお父さんのように嘘つきになります。

無用な不安を与えたくない…。

心配をかけたくない…。

安心させたい…。

これが親の気持ち。優しい嘘になるのです。

でも、

「…パパは嘘つき」

「全部私のために…」

と書いた娘の気持ち。それを受け取ったお父さんの気持ち。互いの思い合いが哀しくも切なく、観る者の胸をしめつけます。

「パパ、愛してる…」という言葉とともに、二人は泣きながら抱き合い、得も言われぬ希望を感じさせるラストシーンでした。

©Social YES Research Institute / CouCou

 
 
 

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