【64】光の世界から光の世界へ
そこは光もない、暗い不思議な海の中でした。 私はただ、ふわふわと浮いていました。 たまに荒れるときもあるようですが、その海は静かで心地よい場所でした。 その海の中で、ただ浮いているだけの日々は何かを考えるわけでもなく、退屈さがあるわけでもなく、何かを想い出すわけでもありませ...
【63】お母さんを守ります
友人が死んだ。 肺癌が全身に転移して逝ってしまった…。 彼はいつも笑顔だった。 病室の彼は、抗がん剤の点滴を受けながらも笑顔だった。 その姿は痩せ細り、まるで別人に思えたが、それでも笑顔は変わらなかった。 抗がん剤治療費が足りなくて、私は友人たちとその捻出のために駈けまくっ...
【62】いただきもの
りんちゃんは、捨て猫です。 生まれたときからお父さん、お母さんを知りません。 年老いたおばあちゃんに引き取られましたが、わずか一年も経たずに、おばあちゃんはこの世を去ってしまいました。 りんちゃんには、そのおばあちゃんとの想い出しかありません。...
【61】The little house
「むかしむかし、ずっといなかの しずかなところに ちいさなおうちが ありました。それは、ちいさいきれいなうちでした。しっかり じょうぶに たてられていました。このじょうぶないえをたてたひとはいいました。 『どんなにたくさん おかねをくれるといわれても、まごの まごの そのま...
【60】YESストーリー「明日への手紙・あれから」
夜汽車に乗っていつまでも、いつまでも手をふり続けていたつばさ。 あれから2年が過ぎ、もうすぐ母になるつばさ。 私はあなたのことを、ひとり想い出しています。 花嫁になる日までのあなたの想い出をかみしめたように、もう一度あなたの幼い頃のことを味わっています。...
【59】YESストーリー「笑う子」
毎朝の道で、いつも通りすがる少年が「おはよ!」と笑顔いっぱいで挨拶します。 毎朝、同じ時間、同じ場所でのこと。 最初、私は戸惑いました。 見知らぬ少年からの挨拶なので、どう対処してよいのか、どのような態度を取ればよいのか、正直面喰っていましたが、相も変わらずその子は笑顔で「...